原油価格の下落は、世界経済の減速とシェールガスの増産が主な原因
2014年6月には107ドルまで上昇したWTI原油は、10月に1バレル80ドル台前半まで下落。
中東情勢の悪化やロシアウクライナ紛争による資源価格の急騰から下落局面へと流れは動いている。原油以外の商品市況も石炭・鉄鉱石が下がるなど商品市況全体が下落傾向にある。
原油を中心に商品市況下落要因
では、何が原因で値下がりが続いているのでしょうか?お金を巡る情報の流れを見ておくことにしましょう。
- 米国の量的緩和縮小
- 米国の緩和縮小で市場から投機マネーが引き上げられつつある。
- シェールガスの増産
- 米国のシェールガス増産による供給増加
- 中国の景気減速
- 高成長で石油をがぶ飲みしていた中国の需要が減少
- リビアの原油生産量の回復
- 内乱などで壊れた生産ラインの回復
- サウジアラビアの増産
- 価格下落局面でも減産せずにシェアを維持。原油価格の下落を認めてシェールガスの一部を採算割れに追い込む
- 米国の敵に対する圧力
- イスラム国・ロシアなど資源価格の高止まりを望む国に対しての経済圧力
●DMMFXのOIL/USD月足チャート:2007年6月から2014年10月22日
NY原油のリアルタイムチャートはこちら
中東・ウクライナで問題が起きていることから、原油価格高騰を予想した方もいると思います。しかし、米国のシェールガス革命の影響は大きく、産油国の足並みを乱す結果につながっています。それよりも中国と欧州の景気減速が需要に与える影響のほうが大きい。投資銀行のゴールドマン・サックスは、鉄鉱石価格の下落に対して「鉄の時代の終焉」と指摘するレポートを公表するなど21世紀に起きた中国と商品の時代という一つのディケイドの終わりを予想。
ゴールドマンのアナリストのクリスチャン・レロング氏とアンバー・カイ氏は10日付リポートで「2014年は、新たな生産能力がついに需要の伸びに追い付き、利益率が歴史的平均に戻り始める転換点、言い換えれば鉄の時代の終焉だ」と指摘した。ロイター
欧州や中国市場で需要が低迷しているため、国際エネルギー機関(IEA)は10月14日、2014年の石油需要の伸びについて、従来予想から日量20万バレルも下方修正。
IEAの需要予想は4ヶ月連続の下方修正であり、前年比でみた石油需要の増加幅は、6月時点で予想されていた前年比+130万バレルから70万バレルまで、概ね半減した形になっている。従来の需要予想を前提に構築されてきた供給網は行き場を失うことになり、それが国際原油需給バランスの歪みを決定的なものにさせている。みんなのコモディティ
この原油価格の下落は、世界経済にデフレ圧力を掛ける恐れがある。
高い原油や資源価格を元に成長してきた中東やロシアなどでは、社会保障や設備投資の原資が不足して社会情勢が不安定になる恐れ。中東で起きたアラブの春やウクライナなどロシア周辺国で起きた革命が再び姿を表すかもしれません。
また、オーストラリアは資源の時代は終わったとして、資源に頼らない経済力を付けようと努力をしている最中。ただでさえ米国の量的緩和縮小による資金引き上げにさらされている新興国経済は失速の危機。
シェールガスの採算ライン
米国においてもシェールガスの生産コストは80ドル・60ドル辺りをメドとしており、原油価格が下落すると開発が停滞。初期投資が大きいゆえに借金を抱えている会社も多く採算割れはシェールガスバブルの終焉を呼ぶ。
米国のバーンスタイン・リサーチによると1バレル80ドルを切ると米国のシェールオイル生産の三分の一が採算割れとなる試算。(アナリストのボブ・ブラケット氏談)
- IEAの試算では1バレル=80ドルを損益分岐点とするシェール田は4%程度
- 油田サービスのベーカー・ヒューズ=75ドルまで下落するとプロジェクト見直しの動きが広まる
バーンスタイン・リサーチのアナリスト、ボブ・ブラケット氏は、北米のシェールオイル生産を網羅的に調査し、ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)CLc1が80ドルを切った場合、約3分の1が採算割れとなると結論した。ロイター
いずれにせよ、原油価格の高騰により採算ラインに乗っていた効率の悪い油田開発はストップする可能性が出てきます。世界的な景気減速が続くと新興国・先進国ともに株価下落やデフレに巻き込まれるため原油の情報は、投資家以外の方にも注目していただきたい内容。