中国最大の危機:シャドーバンキングと理財商品の正体
中国の短期金利が、6月20日に13.4%まで急騰し、7月危機が現実に!と世界の金融市場を恐怖が襲いました。
その根本となるのがシャドーバンキングと理財商品です。
理財商品が生まれた理由
1.中国の銀行は当局によって預貸比率を75%以下と定められている。つまり、預金として預かったお金の75%以下しか貸し出せないため、企業が銀行からお金を借りるのは難しいのです。
2.一方、預金者は年率3%程度の預金金利では割に合わず、もっと良い金融商品を求めていました。
そこで、融資規制のある銀行を介さない金融取引としてシャドーバンキング(影の銀行)が増殖していったのです。
●理財商品=約8.2兆元:満期が2週間から半年程度で予想利回りは約5%前後で、対象は個人や企業。
●信託=約8.7兆元:運用期間が1年以上と長く、利回りも10%前後と高く、対象は大口の富裕層や企業。
こうした高利回りで広く集めた資金が様々なプロジェクトに投資されています。中国社会科学院の調査では、2012年末の時点で14.57兆元(約2.35兆ドル)に及ぶとのこと
集めたお金の融資先
この巨額な資金は、地方債を発行できない地方政府がインフラ開発に作った「地方融資平台」や不動産開発などに融資されています。
この投資が成功していれば問題ありませんが、中国の高成長を見込んで大量にマンションや都市開発を争って行った結果として不良債権化している可能性があることが心配されています。
中国最大のショッピングモールは今やゴーストタウン化
中国南部・広東省東莞市で2005年にオープンした「ニュー・サウスチャイナ・モール」は、約46万平方メートルのショッピングエリアに2350もの店舗が入居可能で、店舗賃貸面積では、米国最大級の「モール・オブ・アメリカ」の2倍を超える世界最大規模のショッピングモールだ。CNN
このような例がいくつか存在しています。
世界で住宅価格の高い都市ランキング
アメリカの「アトランティック誌」がIMFのデータを引用して世界で住宅価格の高い都市世界Top10を調査したところ、北京、上海、深セン、香港、天津、広州、重慶、東京、ロンドン、ニューヨークと中国の都市が7つもランクインしたことを中国メディアの新唐人電視台が報じています。実際の不動産価格ではなく「住宅価格と給料の比率の計算から住民の購入しにくさランキング」と言える内容です。
理財商品や信託は、中国版サブプライムローン化するのか?
地方政府は財源や借り入れに規制があるため、理財商品や信託でお金を借入れていました。その償還(返済)が7月から始まっています。
米国で起きたサブプライムローン危機のように、レバレッジをかけての運用ではない。
事業資金としての直接金融である。
金融機関が運用手段として積極的に活用しているわけではない。一部の銀行は融資をせずに運用を行っていました。
として、サブプライムローン危機で起きたような大幅な金融収縮に繋がることはないとの意見もあります。
冒頭の短期金利の上昇と上海株の大幅下落は、中国版サブプライムローン危機が起きるのではと市場にショックを与えました。その後、中国人民銀行が流動性を供給したことで落ち着いています。
中国の経済データ:世界経済のネタ帳
過去10年のアジア株価指数:2013年2月
習近平政権による改革
前政権はシャドーバンキングに放置していたのに対して、習政権は厳しく規制しようとしています。
不正を働いた銀行や不正官僚に対しての処罰が行われ、バブル経済を膨張させないという中国政府の意志とも言えるでしょう。
ボアオ・アジアフォーラムでも「超高度成長の持続は不可能」と習近平主席が話しています。
ただ、やりすぎた場合には、市場の混乱や取り付け騒ぎを起こしかねません。シャドーバンキングを規制するだけでも新規貸し出しの低下や景気の足かせになりかねずリスクを生じます。
米国のQE終了による影響
米国の金融緩和(QE)が縮小・終了していくなかで、米国から新興国に流れ出ていた資金が米国に戻っていく可能性があります。
その中で、中国がシャドーバンキング整理のために、外貨準備高を取り崩し=米国債の売却を行うと米国の金利上昇や出口戦略の失敗に繋がるため米国・日本・中国の共同戦略が必要とされそうな雲行きです。