ジョセフ・スティグリッツ教授のグローバリズムを良くするために政府と市場のバランスを取り戻せ!:国際金融経済分析会合

3月半ばから3回開催された【国際金融経済分析会合】で、消費税増税についてやアベノミクス・財政出動など、日本政府の経済運営について、大切なことが話し合われています。

  • 第一回:2016/3/16 ジョセフ・スティグリッツ コロンビア大学教授
  • 第二回:2016/3/17 デール・ジョルゲンソン ハーバード大学教授、岩田一政 日本経済研究センター理事長
  • 第三回:2016/3/22 ポール・クルーグマン ニューヨーク市立大学教授

第一回のジョセフ・ステイグリッツ教授は、法人税減税や消費税増税に反対する立場。世界経済の問題は総需要不足!

量的緩和などの金融政策でお金をジャブジャブと出しても景気は回復しない。政府の財政出動が必要との意見。

市場経済任せ・所得税減税などの新自由主義経済が、格差を生み世界の不安定さを生じさせているとの話。安倍晋三首相周辺も、スティグリッツ教授やクルーグマン教授の話を聞くことで、かなり考え方は変化したのではないでしょうか。

財務省主導の負債増加⇒消費税増税路線に対しては、バランスシートを見ることと主張しています。また、社会保障の民主化には反対の方向で、政府の役割を増加させて世界協調路線へと進むことを解決策として提示し、G7での日本のリーダーシップに期待されています。

今後の世界経済の行方に大きな影響を与える考え方だと思います。

ジョセフ・スティグリッツ教授の提言:緩慢な成長~大低迷、新たな凡庸

現在は危機ではない。

G7の国々では、隠されたケースも含めて多くの失業が発生。

緩慢な成長の果実は一部のトップ層に偏って分配されて格差は拡大し、賃金上昇は停滞。公式には失業率が低い国も雇用の質や覆い隠された失業に疑問

2007年の世界経済(世界経済危機前)は、バブルに支えられていただけで、実際には弱かった。

堅調な成長に戻る可能性は低く、景気後退の可能性は高い

資産価格バブル収縮懸念

国家や企業の多額債務、新興国は巨額の資本流出に直面

伸び悩む米国経済

1980~1998年までの経済成長が継続していたら、米国のGDPは、現在GDPよりも15%程高かったはず。

中位の家計所得は1989年と比較して1%も上昇していない。現在の生産年齢人口の就業率は低い

最下層の実質賃金は60年前よりも低い水準

若いアフリカ系アメリカ人の失業率は23.7%

欧州はさらに悪い

失業率はさらに高く、若年層の失業は深刻。経済成長も低い。

ユーロ危機は終らず、一時的な小康状態。

統一通貨が機能するために必要な制度が創設されず、その見込みもない

中国の状況

深刻な経済減速となる見込み。

欧州と米国では中国経済の減速埋め合わせはできないのではないか

大不況に関する誤った診断

ただのバランスシート不況ではない。

すでに大企業のバランスシートは再構築された。バランスシートやお金の問題ではない。

需要が足りないことが問題

永続的な世界の不均衡が起きており、ユーロ圏が問題を悪化させている。

非対称な調整が起きている

所得低下の直面する国家は消費を減少させざるを得ない

所得が増加した国家は、その分の支出を増加させていない

原油価格の下落で起きる需要増加は、下落の悪影響を下回っている

中心的課題

問題は世界的な総需要の不足

各国で非貿易セクターへの支援は不十分

債務・金融への過度の依存⇒先進各国の量的緩和

約30年前に始まった市場経済ルールの転換(税制の再設計・ずさんな自由化)が経済成長率低下・不安定化・不平等を招いた

大低迷は、深刻な問題を隠している

気候変動

格差・多数の貧困層

富・健康の不平等

中間層縮小

●市場経済に根付く問題

短期的志向

基礎研究・インフラへの投資不足

過度の金融化で、富と資本のギャップが広がる

教育システムの適合失敗

これからの対応策

金融政策について

金融政策は十分、その役割を果たした

深刻な景気停滞時に金融政策が有効だったことはない。唯一の効果的な手段は財政政策。

本当の問題はゼロ金利制約ではない。マイナス金利は悪い副作用をもたらすことも

量的緩和政策は不平等を拡大し、金融市場にゆがみをもたらした可能性。競争的な通貨の切り下げを生むが、ゼロサムゲームにしか過ぎない

財政政策について

財政政策は債務増大のリスクを高める懸念

2008-09年の景気刺激策は、失業率低下をもたらし、更なる景気後退・不況を防いだ

債務への懸念はバランスシート・アプローチに関する問題すり替え。政府は生産的な投資に対して支出することが前提

グローバリゼーションで政策効果は減少。便益は他国に流出して、費用は自国に発生。優位な解決策を出すには世界の協調関係は弱い。

繁栄を取り戻すために機能しない・不十分

●金融政策

根本的な問題はゼロ金利ではない

低金利は資本集約型テクノロジーを生み出し、雇用なき経済回復に繋がる可能性

●貿易協定

関税はすでに低水準

G7諸国による資本集約財を輸出する一方で、労働集約財を輸入するバランスの良い貿易取引増加は雇用を減少させる効果

●見当違いの供給サイドの施策:法人所得課税

●更なる緊縮財政

対処法:緊急問題:世界の総需要を取り戻す

パリ協定を受けて、炭素に高価格を設定することは気候変動に対応する世界経済への改革・投資を促す

経常黒字の一分の再活用:開発銀行の資本再構成、新規創設

効果的な施策

●政府支出の増加

国のバランスシートでは、負債のみではなく資産・負債の両面を見ることが適切

環境税や土地税

●平等性を高める施策で世界の総需要を増加

経済ルールの大転換:平等化

所得移転と税制の改善

賃金上昇と労働者保護を高める施策

グローバルな基軸通貨制度を構築:需要縮小要因の外貨準備積立の必要性を減らす

世界的な総需要の先に

サービス経済への移行が進む中で、非貿易セクターは重要に

国内需要の低迷は供給を減らす。国内需要は民間消費より大きい。

国内需要の大半は公的ファイナンスで調達されるもの、健康や教育は重要なサービス部門

緊縮財政を止める

米国ですら、緩やかな緊縮になっている

バランスのとれた債務と税金

各国ごとに最適な債務と税金バランスは異なる。常にバランスシート視点を持つ

●全ての国で炭素税を含めた環境税の引き上げで相当な歳入が得られ経済パフォーマンス改善

金融取引税も同様

土地や天然資源に対する税金を引き上げる

●法人税の減税は投資拡大には値しない。大抵の投資は借り入れが原資で、支払利子は所得控除

むしろ、国内投資や雇用創出に積極的でない企業には法人税引上げの方が投資拡大させる

炭素税・相続税は、現時点での支出を促す

資金調達コストが低く、投資リターンが高い時はバランスシートの観点が重要

効果的な支出

必要なことはインフラとテクノロジーへのより積極的な投資

世界的に製造業の雇用減少。:グローバリゼーションの影響は大きい

サービス業にシフトする構造改革が必要。市場だけでは構造改革は達成できない

サービス産業の中で、教育・健康に改善余地

構造変革の課題

かつてほど、資本集約的ではなくなるだろう。そのため投資額は小さくて済む

熟年労働者は、新しい経済構造に対して準備不足

国債で運用している高齢者がわずかな所得しか得られない

若者は家を買う余裕がなく、多くの国では多大な債務を背負いこまされている

農業から製造業への移行では、政府が中心的な役割を果たした。同じように政府は積極的な役割を担うことが求められている

格差と戦う

単なる再分配ではない。

●事前分配:市場で得る所得のより公正な分配のために経済ルールの大転換

家賃上昇は、所得に対する生産的な資本比率減少にも関わらず、所得に対する富の比率が上昇するという異常さ

労働生産性と実質賃金における不均衡

格差縮小は短期的にも長期的にも経済パフォーマンスを改善する

構造改革

適切な需要無しに、サプライサイドの改革は失業を増やすだけで、経済成長に関与しない

サプライサイドの改革は需要を弱めGDPを低下させる

適切に設計された需要刺激策は供給/生産性を増加させる

機能するサプライサイドの施策

テクノロジーへの投資拡大

人間への投資拡大:健康で生産性の高い労働力

古い産業から新しい産業への移行

競争:独占・経済的な権力合従を防ぐ

●労働参加を促進する施策

友好な公共交通システム

育児休暇・有給病気休暇

子育て支援

●被差別層・社会の主流から残された層の包摂

女性

少数派・マイノリティー

移民

●金融市場改革

金融機関が他に害を及ぼすことを防ぐだけでは不十分

中小企業のために民間資金提供するように金融機関に促す

債務よりも資本性の資金を促す

法人所得税の引下げは効果的でない

金融市場の規制緩和も同じく。

●TPPは悪い貿易協定であるというコンセンサスが広がりつつあり、米国議会で批准されないのではないか

サプライサイド施策の失敗

1980年代の米国における失敗

税収増加の約束⇒実際には減収

成長率を高める約束⇒実際には低下

サプライサイド施策の格差への影響懸念は最高潮

金融セクターと金融混乱

金融の混乱は金融市場の不透明感をは反映、金融市場は近視眼的で気まぐれ

金融混乱は、世界経済の先行きに関する深刻な不確実性を反映

幾つかの国における金融政策調整失敗に関連。為替レートの不確実性や不安定な資本フローが起きている

実体経済に波及する可能性が高いという問題あり

●金融セクターの改革

過度なリスクテイク

市場操作・略奪的貸付

市場における支配的地位の乱用

金融セクターの害を防ぎ、これらを阻止する

金融セクターが低い取引コストで社会的役割を担えるようにする

●今のところ失敗している。

学資ローン・住宅ローン・年金に対する公的手段の拡大が必要

世界規模改革

新しい世界基軸通貨制度の必要性

現在のシステムは過去の遺物

経常黒字を追求するバイアス

準備通貨国の脆弱性

世界的な協調

世界の不均衡縮小には世界的な協調が必要

中国の経常黒字は減少過程

ユーロ圏の経常黒字は増加⇒ユーロ圏での大きな改革が必要

世界的なマクロ経済(金融及び財政)政策協調が必要

政策の不調和が拡大している

経常黒字を活用するより良い手段が求められている

●開発に向けての資金提供

債務の市場:債務再構成に関する国際的なフレームワークがない

海外直接投資:投資協定が協定国の規制能力を損なう

多国籍企業への課税:国際的な税体系が税収拡大を困難にしている

気候変動へのアクション

気候変動対策への投資は世界経済に必要な景気刺激策

炭素に価格設定することで投資が喚起される

経済界はやがては炭素に価格設定されることを理解したはず

世界的な意思決定プロセスの改革

世界的な経済統合は、政治統合よりも早く進んだ。

世界的な経済政策は、権力や特定の利害に左右される

焦点を当てるべきは下方への調和。最も恵まれない立場にある者との共通基盤調和

●世界的な意思決定プロセスの改革

代表性・正当性を増すための工夫が必要

世界経済調整委員会を創設し、国連・IMFの元で運営

●世界的意思決定再考

多くの問題で全会一致は困難

有志連合が有効

国境を超えた課税

新しい世界基軸通貨制度:有志連合でスタート

共同でリスク分散しないと、高水準貯蓄を行う国が出来て世界的な総需要を縮小させる

資本集積に有利に働くルールは格差を拡大させ、世界的な総需要拡大に逆効果

世界的な不安定性は格差を生み、高水準の貯蓄に繋がる。そして、世界的な総需要欠乏に繋がる

今の世界経済

30年ほど前、多くの先進国では、税率の引き下げや規制緩和といった実験をはじめた。

結果として、経済成長は鈍化し格差が拡大

現在の方向性が維持されると状況は悪化

今や大きな失敗であったと言うべき

●失敗した実験

金融政策:経済成長・経済安定・雇用よりもインフレの安定化に焦点

財政政策:欧州は財政赤字に対して厳重な制約

民営化の流れ:社会保障分野の民営化

これらは、期待程の成果を上げていない

●世界の制度設計に関する実験も失敗

40年前から資本移動の自由化

政府よりも市場メカニズムの方が効果的

結果は不安定化時代に

現在は、IMFでさえ資本移動制限が必要と主張

スティグリッツ教授:この道しかない

●政府と市場のバランスを取り戻す

第三セクターや新たな制度枠組みの重要性を認識

●緊縮財政をやめる

●世界的な基本的ニーズ、公共財、外部性に対して世界的に対処する

底辺への競争を行うのではなく世界的な生産性向上に努める

世界中・全ての人間の生活水準を引き上げる施策に全てをささげる

進歩に関する指標の世界的な再評価を行う

世界経済の道

新たな凡庸・大低迷・長期停滞は政策の失敗によるもので避けられる

統合が進展する中、最善の方法はバランスを取り戻し総需要を増加させるための国際的な協調を行うこと

国際協調は困難

G7で日本のリーダーシップ発揮に期待

国際協力が不十分であっても、各国が単独で行えることは多く存在

国際金融経済分析会合:スティグリッツ教授提言資料から抜粋

 

いかがでしょうか、長くなりましたがとても重要な内容ですので、スティグリッツ教授が今回、来日頂き安倍首相はじめ政府に提言した意見です。

今の日本経済の閉塞や世界経済不安に対して、解決策の一つになるのではないでしょうか。

いくらお金持ちに富が集まっても消費できるお金は限られている。⇒結局、お金持ちを優遇しても底辺には降りてこなかったというのが壮大な1980年からの実験結果とスティグリッツ教授は語っています。

ジョセフ・スティグリッツ:wiki:IMFなどの緊縮財政路線に以前より反対、ノーベル経済学賞受賞

私は、世界を不幸にしたグローバリズムの正体という本で最初にスティグリッツ教授の考え方を読みました。

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