高齢者は賃貸住宅を借りられないという話は本当?

家を買う方が有利なのか賃貸の方が有利なのかという疑問については、その人の生き方も絡んできます。

ただ、住宅購入を検討している理由に「歳をとったら賃貸住宅を借りられなくなるから」という意見があることをご存じの方も多いと思います。

これは事実なのでしょうか?

高齢者は賃貸住宅を借りにくい

確かに、現在は、この意見が正しい状態です。

高齢者のみの世帯だと

  • 収入が年金のみで家賃滞納の心配がある。
  • 住宅内で事故や病気が発生して住宅価値が減少するリスクがある。
  • 手続きや意志疎通に問題が生じないか心配になる

などという理由で特に人気物件は借り難いことがあるでしょう。

また、物件によっては段差が大きい、トイレや風呂など水回りが高齢者に優しくないなどバリアフリー対応がなされておらず住みにくいということもあります。

高齢者が住みやすいサポート制度

そこで、様々なサポート体制が国や地方公共団体で組まれています。

高齢者向け優良賃貸住宅:高齢者向けに配慮された賃貸住宅でバリアフリー化され、急病や事故の際には生活援助員を派遣する緊急時対応サービスが付加されています。自治体により異なるものの家賃補助があります。

高齢者円滑入居賃貸住宅:高齢者の入居を拒まない賃貸住宅が登録されている制度です。バリアフリー化されていない物件も含まれます。

上記2つは平成23年から「サービス付き高齢者向け住宅」に一本化されました。

高齢者家賃債務保証制度:60歳以上の高齢者の家賃・原状回復費用や損害賠償責務を保証します。家賃の35%の保証料をし払えば家賃を滞納した場合に6か月までの家賃が保証されます。


将来は賃貸が借りやすくなる

現在(2013年)は、やや借りにくい現状が残っています。

では、将来も「歳をとったら賃貸住宅を借りられなくなる(借り難い)」のでしょうか。結論としては、これから借りやすくなる時代が来る確率の方が高いと考えます。

日本はこれから、「少子高齢化」による人口減少時代を迎えます。日本の人口推移グラフ

高齢化率(高齢人口の総人口に対する割合)は2010年(平成22年)の23.0%から、2013年(平成25年)には25.1%で4人に1人を上回り、50年後の2060年(平成72年)には39.9%、すなわち2.5人に1人が65歳以上となることが見込まれている。総務省

つまり、これから「家余り」の時代がやってくると予想できるわけです。借りたい人が少ない上に人口の多くが高齢者になる時代で、「高齢者お断り」の賃貸住宅では経営が成り立ちません。むしろ率先して選んでもらえるようなサービス提供を行う方向に進んでいくでしょう。

一方、今後のことをもう少し考えてみると地方の過疎化が進み三大都市圏を中心に都市への人口集中の可能性が高まっています。ゆえに都会の中心にある人気物件では引き続き高齢者より若年層や壮年層が優先されるでしょう。しかし、高齢者が例えば、銀座や六本木のど真ん中の物件に住む必要があるかという意見もあるでしょうし、老後どこに住むかということを考えて行動する方が良いと思います。

みずほ銀行の賃貸市場に関する試算

賃貸市場の縮小

●市場全体:2010年12.6兆円⇒2030年8.8兆円-30%減少

●ファミリー向け(40㎡以上):2010年8.8兆円⇒2030年5.6兆円-37%減少

 

高齢者世帯の割合

左図が2010年、右図が2030年、ファミリー世帯が大きく減少し単身世帯が増加します。単身高齢者世帯は7%から14%に増加し賃貸住宅を保有し貸し出している家主側も高齢者世帯に貸さないという態度が取れなくなる可能性が高いでしょう。

賃貸住宅の市場規模も1946万世帯から1753万世帯への減少が予想されています。

また、賃貸に住まずに老人ホームを選ぶという選択肢もありますね。こちらも高齢者向け賃貸住宅と考えることもできます。

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